神戸製鋼データ改ざん事件と日本の製造業に関する考察

ここ数日、神戸製鋼の相次ぐデータ改ざん事件が報じられている。

神戸製鋼は日本人には鉄鋼の大手メーカーのようなイメージがあるが、実際のところは世界の鉄鋼メーカーのランキングでは50位という存在なのである。

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神戸製鋼は実はアルミなどの素材が主力商品なのである。

しかしここ数年は売上が下落しており、また売り先もほとんどが日本マーケットで、

肝心の中国でのビジネスが上手く開拓できていないのが実情なのだ。

下記のように中国での鉄の需要は圧倒的で、そのような需要があるからこそ中国での荒鋼の生産が伸びている。

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売上構成でみても、アルミや建設用重機なども大きな比率となっており、そしてそれも中国で売れなければ厳しいと思われる。

なぜ神戸製鋼は中国で売れないのか。

それはおそらく中国のメーカーの技術力が高まり、品質では日本のメーカーのものとほぼ同等となっていることが推測される。

日本の製造業が技術力や品質で他国の製造業を圧倒してきたのは2000年頃までであり、

2000年〜2015年にかけて中国は世界の工場へと駆け上がるながで、徐々に技術力や品質が向上してきたのだ。

そのなかで主要な役割を果たしたのがISO9001などの国際品質規格である。

20世紀の間は、世界中の製造業の品質管理は自社内でブラックボックス化されており、

各社が独自の品質管理システムを作り上げていたのだが、各社の品質管理には一長一短があった。その問題を解決するのが、国際規格のISO9001だ。

要するに世界中の製造業が同じ品質管理システム(基準)を使うようになった。

ISO9001で規定しているのは生産工程だけではなく、人材育成にまで多岐に渡る。

要するに「工場内で起こること全てのワークフロー」の基準なのだ。

言い換えれば、ISO9001さえ導入すれば、あとは誰が作っても品質は同じという状況になってしまった。

それで最も得をしたのが中国である。昔のMade in China は安かろう悪かろうの状態であったが、2000年頃からはその品質が一気に業界標準レベルにまで近づいたのだ。

その結果、特に2005年以降はモノづくりでは日本と中国の差はほとんどなくなり、価格競争が激化することになった。

中国製品と品質も技術力も差がほとんどのなくなった日本の製造業が注力したのはブランド力の向上である。

特に自動車産業はブランドの構築が非常にうまくいっている。

言い換えると自動車以外の産業ではななかなかブランドを構築できず、中国と価格競争をしてきたのだ。

産業用の製品の場合は、バイヤーもプロになり、プランド要素はほぼ取り除かれた裸のスペック勝負を強いられることになる。スペック差がなければ即座に「安い方」が採用されるのだ。

もちろん安定供給・サプライチェーン体制などは重要であるが、だからといって高く買ってくれるというわけでもないのが製造業なのである。

また競争激化の影響が如実に現れるのが従業員の年収である。

神戸製鋼の平均年収は590万円神。少し前まで650万円以上あったが、徐々に減って来ている。

理系の社員はおそらくかなりのエリート層であり、そのような人材が20代後半になるとやはり同スペックの人材と比較して、圧倒的に低年収だと気づくのである。

そこで優秀層から転職に踏み切るのだ。

特に理系の優秀な人材なら20代後半でも年収1,000万円以上は普通に稼げるので、神戸製鋼から転職すれば年収が2倍になるイメージだ。

こうのように優秀層がごっそり抜け出して、カスばかりが残った神戸製鋼では製品開発は停滞し、スペックを改ざんするしか新しい製品を作る方法はなくなったのだ。

昨今、日本の製造業の相次ぐ不正発覚の温床には、ハイスペ人材の流出がある。

日本はモノづくりは国家事業のように言われているが、実際にはGDPの20%未満の産業なのである。また平均年収も商社マンなどに比べると低く、はっきり言って日系製造業で働いているうちは低スペを彷徨うしかないのだ。

今回の神戸製鋼のデータ改ざん問題も、低スペの仕業と考えると全て納得できるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

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