書評 『新・所得倍増論―潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』デービッド・アトキンソン著

著者のデービッド・アトキンソン氏はイギリス出身の日本の文化財の専門家である。

日本在住で小西美術工藝社社長をしているが、元金融アナリストの著者は経済に非常に詳しく、また日本企業のこともよくわかっており、アナリストらしいデータ分析で導き出され鋭い結論が非常に示唆に富む。

■序盤は「日本病」の病原菌の究明

日本人男性は失われた20年の間にかなり低スペ化してしまった。

その原因は紛れもなく日本社会の生産性の低さにある。

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日本の生産性は世界ランキングで27位であり、欧米やシンガポール、香港と比べると半分以下の低スペ国家なのだ。

ちなみにカタール、ルクセンブルク、ブルネイは資源国なので、比較しても意味がない。

日本の生産性が低い理由はたくさんある。

その中でもやはり人口構成の問題が大きな要因となっている。

そもそも日本という国は、この少子高齢化という問題に対しては、ほとんど何もしてこなかったに等しい。

人口問題のときに必ず意識しないといけないのが生産人口である。

日本の15~64歳の生産年齢人口は2013年で7,883万人まで減少している。即ち約4,000万人の人が働いていないのが日本なのである。これを見てるあなたは紛れもなく自分の稼ぎを誰かに間接的に恵んている状況なのだ。

それが子供世代であれば、まだ日本の将来への投資として割り切ることができるかもしれないが、実際にはあなたの納税したお金のほとんどが高齢者の養分と国債の返済に当てられているのだ。

更に2060年頃には生産人口は4,418万人まで大幅に減少することが見込まれている。

イギリスではこの生産人口の減少の問題を大量の移民で補填した。

イギリスの経済が好調になると、ドイツやフランスも移民を受け入れ経済成長を促進してきたのだ。

アメリカは移民国家であり、当然ながらこれまで移民を大量に受け入れてきたので経済が安定的に成長してきたのだ。

また女性の給料も男性と比較すると圧倒的に少なく、女性の労働者=年収300万円以下というのが実情だ。

これは他の先進国と比較しても恐ろしく低い水準で、日本人の女性は仕事に関してかなり甘いと指摘されている。

また日本の人口を維持するためには、出生率を上げないといけないのだが、仮に人口1億人を維持する場合、既婚女性は3.5人の子供を生む必要がある。

これはかなり無理な数字なので、子供を産む女性を増やす必要がある。

実際に少子化問題を改善した欧州各国は未婚女性の出産を増やしたのだ。

しかし日本では未婚女性の出産はタブー視されており、同じアプローチはほぼ不可能なのだ。

日本人は問題の原因が頭では理解できても、解決するという行動ができないのだ。

これこそがまさに著者の指摘する日本病なのである。

日本人は同じムラのみんながやってないことはでいないという農耕民族なので、新しい手法に関しては本当に黒船が来て大砲や銃で脅されないとアクションができない。

欧米の狩猟民族のように「まずやってみる」というアクション主体の改革が非常に苦手である。

また女性の賃金の低さを、女性の怠慢だと指摘しているのは流石だと言える。

日本の若い女性とデートすると、やたらと奢られようとするが、それは自立心の無さが原因なのである。

白人女性はデータで割り勘を好む。男性にナメられてるのが我慢ならないのだ。

男性と互角に、それ以上に渡り合おうとする精神が年収を上げる原動力となる。

日本人女性には、闘争心がかなり欠落しているから、欧米諸国と比較して、日本人の年収の男女差は大きなものとなっているのだ。

また年功序列も弊害だと言及されている。昔からやっているからいいとは限らない。常に新しい方法でカイゼンを模索することが大切なのだ。

■日本でいながら成功するには

ではどうすれば日本でいながら成功できるのか。

それは短期的な成功に執着するしかない。

これまでの日本人は長期的な視点を考え過ぎ、やるべきアクションが取れず、結果的に現状維持という沼地にハマって抜け出せなくなったのだ。

目先の利益を追うことをバカにして、個人も企業もやたらと長期目線で物事を考えて、時間だけが経過してしまった。

個人が長期のキャリアプランを立てたり、企業が中期経営計画を策定してしまうのは、時代のスピードの高速化をかなり甘く見ている証拠である。

本書でも日本の経営者の改革の少なさが問題だと指摘されている。

GDPを上げるには、企業の時価総額を上げるのが効果的であり、米国の経営者の仕事は時価総額を上げることだ。

時価総額を上げられない経営者は、どんな有名でもクビになるのが米国の時価総額資本主義なのである。

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そして日本の経営者はこの時価総額を上げることにかなり怠慢であることがデータによって証明されてしまった。

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